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2010年 08月 13日
姉さんは、翼を手に入れた。
白い雲が幾重にも積み重なって、突き抜けるように透明な青空。 その中心を、姉さんはとんだ。 私は開かない窓からそっと、その様子を眺めている。 姉さんは、翼を手に入れた。 そして、私を置いてとんでいってしまった。 目を覚ますと見慣れた白い天井が私を見下ろしている。 いつもと同じ、私の日常。 囲われたこの病室だけが、私の世界。染みの一つも無い真っ白な世界。 ゆっくりと身体を起こすと向かいのベッドに私と同じように身体を起こしていたカジマさんと目が合った。 おはよう、よく眠れたかい? はい、おかげさまで おはようございます それはよかった ニヤニヤと少しだけ口の端を吊り上げながらカジマさんは、何度か小刻みに頭を振った。 カジマさん(下の名前は知らない)は2ヶ月ぐらい前にこの世界に入れられた。 その特徴的なにやついた顔は、私とカジマさんが初めて顔を合わせた時からいつまでも剥がれず顔面に吸着している。 延々と、永遠と。 笑い続けるカジマさんの内面にはどれ程の暗闇が絞りかすのように滞留しているのだろうか。
by w_h_o
| 2010-08-13 02:43
| 月の煙
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