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2007年 08月 13日
サクッ。鋭利な先端を突き刺す音。対象を動かないように固定する。
スー。肉を切断するために特化した刃を滑らせる。 彼女は麗しき解体者、目の前に置かれた肉塊(ごちそう)をその両の手に持ったお気に入りの解体道具でバラバラにしていく。すでに短くない時間が過ぎているはずのその塊は尚、たっぷりと赤みを帯びている。ひたすらに柔らかいピンク色。 右手でナイフを滑らすこと数回、解体作業を終えた彼女は恍惚の表情を浮かべそれを捕食する。その一連の動作は無音、まるでそれが正常と思わせるほどの手際のよさはその異常性を外界と隔離する。今、このひと時のみは彼女がマスターなのである。 「あんたすごいわ、こんなに奇麗な食べ方始めてみた、サイコー。」 「そう?これぐらい誰でもやれるわ。」 「いやいや、音もなくここまで奇麗にバラせないよ、相当手馴れてなけりゃな。いったいどんな人生歩んできたんだか。」 別に、特別な技術なんて要らないのに、ステーキ食べるぐらい。
by w_h_o
| 2007-08-13 00:11
| 月の煙
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